twitter 字数制限撤廃!?

ツイッターが字数制限を実質的に撤廃するという報道が、インターネットサービス業界をにぎわしています。2006年のサービス開始以来、設けていた「1投稿140字以内」という制限を一気に1万字まで拡大するのではないかというニュースが流れ、それに応じて、米ツイッター社のジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)の投稿が臆測を呼んでいるのです。日本で人気の高いツイッターの字数制限撤廃の可能性について、ジャーナリストのまつもとあつしさんがリポートします。

 ◇日本でツイッターが人気なわけ

 日本語や中国語など、漢字(2バイト文字)を用いる言語圏では、ツイッターの140字制限はさほど窮屈ではありません。むしろ、俳句や短歌のように、短い言葉で強い印象を残すことができる場所として愛好されてきた面があります。

 一方、英語などより多くの字数を必要とする言語では、ドーシー氏が「長文投稿のために(長文のテキストを)画像キャプチャーして投稿するのを見かける」と指摘するように、ユーザーにとって必ずしも快適とは言えない面がありました。

 例えば、「臥薪嘗胆」(がしんしょうたん)は4文字です。ところがこれを英語で表現すると、短くしても「endurance of hardships」となり、半角で空白も含めると22字も使うことになってしまいます。世界的に日本でツイッターの人気が高いのには、このような言語・文化的な背景が大きいといえそうです。

 ◇シンプルでリアルタイムが特徴のツイッター

 文字情報だけであればまだしも、ニュース記事を紹介するため、ウェブサイトのアドレス(URL)を張り付けると、いよいよこの窮屈さは増します。ツイッター上で他のユーザーに直接メッセージを非公開で送る「ダイレクトメッセージ」は、すでに1万字までの拡張が行われています。もし、ツイッターの字数制限が変更されれば、「もっと多くの字数で投稿したい」というユーザーのニーズに応えるはずです。

 ただ、より多くの文字を投稿できるようになることで、「フェイスブックのような他のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と何が違うのか?」という疑問が出てくるでしょう。

 フェイスブックは1万字以上の投稿が可能で、投稿内容の公開範囲は「インターネット全体」「友だち」「親しい友だち」と細かく設定できます。ツイッターと同じようにフォローやブロック機能も備えていますし、投稿内容を自分の友だちにシェアすることもできます。ツイッターと同等以上の機能を持っているといえます。

 この疑問を解き明かす鍵が、「シンプルさ」と「リアルタイム性」という二つのキーワードです。ツイッターができることは、おもに短い文章の情報を投稿し、フォローしてくれているユーザーに届けること。極端にいえばそれだけです。ITに詳しくなく、通信環境が十分に整っていなくても簡単にできるシンプルさと、その時々の出来事をすぐに投稿し、共有できるリアルタイム性がツイッターの特徴なのです。

 ◇「利用者が増えていない」という事実

 多くのITウォッチャーが注目するのが、こうしたツイッターの特色が、字数制限の実質的な撤廃で損なわれることがないかという点です。

 予想される変更は、140字まではツイッターのタイムライン(投稿を閲覧する画面)に表示され、続きを読むリンクをクリックすれば、さらに多くの内容が表示される、というものです。これが実現すれば、ツイッター内で詳しい情報が確認できるようになる一方、投稿や表示のための手間が増え、ツイッターを使う心理的なハードルが高まると感じるユーザーも現れるでしょう。

 ツイッターにとってはリスクにもなる字数制限撤廃が、なぜ予想されるのでしょうか。実はここに来て、ツイッターのアクティブユーザー数の伸びは頭打ちになっています。積極的な広告メニューの導入で売り上げは伸びているものの、比較されることの多いフェイスブックに対してユーザー数が伸びていないとなると、投資家からの評価は厳しくなります。字数制限を含め、今後ツイッターの打ち出す施策は、いかにアクティブユーザーを増やすかに焦点をおいたものになるはずです。

 ◇デジタル掲示板のツイッターが向かう先

 シンプルかつリアルタイムであるがゆえに、ツイッターは多くの国や年代で支持を集めました。「テキストを中心に情報を投稿し、共有する」という基本的な機能は同じなのに、ツイッターフェイスブックが、異なる使われ方をしているというのも興味深いポイントです。

 ツイッター社自体も、「ツイッターは(フェイスブックのような)SNSではなく、“情報ネットワーク”だ」と断言したことがあります。SNSが、人と人とのつながり方に重きを置く社交場のような存在だとすると、情報ネットワークであるツイッターは情報の共有や拡散といった伝播(でんぱ)のあり方に重きを置く、デジタル掲示板のようなイメージです。

 もし字数制限が撤廃されれば、これまで混然一体と捉えられていたツイッターフェイスブックなどのソーシャルメディアの役割や、私たちの生活の中の位置づけを見直すきっかけになるかもしれません。実際、世代ごとに使用するSNSが異なるという傾向が出始めています。